2017.09.20

みなさんは、生きていて、何が一番うれしいですか。
この質問に対しての私の答えは、……ちょっと変わっているかもしれません。
私は、自分が生きてて、一番うれしいこと、つまり、一番のやりがいのあることは、
「ひとに何かを分かってもらうための新しい手法を考え出す」ことなのです。

こどもたちに、この世の中には、こんな面白い考え方ややり方がある、ということを分かってもらうために、ピタゴラスイッチを作ってきました。アルゴリズムっていう面白い考え方を分かってもらいたくて、「アルゴリズムたいそう」や「アルゴリズムこうしん」を考え出しました。一対一対応という考え方を理屈ではなく分かってもらうために、「おとうさんスイッチ」を生み出しました。他にも、経済の本質というものを分かってもらいたくて、「経済ってそういうことだったのか会議」を企画し、竹中平蔵さんと作りました。25年ぐらい前には、サントリーのモルツやTOYOTAのカローラⅡや、NECや湖池屋などのTV-CMを作っていましたが、それらも、商品名や商品特徴やキャンペーン名を分かってもらう新しい手法には、どのようなものがあるのかを研究開発したくて行っていたのでした。

新しい分かり方

私は、ひとが何かを分かるとき、小さな『生きててよかった』が生まれると思っています。例えば、サンドウィッチを食べながらコーヒーを飲んだら、苦手だったコーヒーのおいしさが分かった時、積分の基本的な考え方が教科書に載っていた部分求積法で分かった時、HMVというレコード屋さんの名前が “His Master’s Voice” から来ていて、あの犬のイラストの物語が分かった時、などなど……。
そして、分かった瞬間には、満足感と爽快感が混じり合った、なんとも言えない気持ちよさが得られます。
つまり、自分が生きがいとしてずっとやってきた、分かってもらうための新しい手法の探求は、生きててよかったを生むための手法の探求でもあったのです。

この秋、刊行する『新しい分かり方』という書籍には、幾十もの「分かってうれしい」「分かって腑に落ちる」が入っています。同時に幾十もの「分からないけど、なんかうれしい」「分かるけど、なぜ分かるんだ」も入っています。他にも、「分からないけど、この分からなさはなんか初めてだ(これを「新しい分からない方」と呼ぶ)」もあります。

どうか、手に取って、『新しい分かり方』の数々を心ゆくまで確かめてください。そして、あなたの内に、新しい表象が立ち上がるのを確かめた後には、随筆も読んでみてください。「新しい分かり方」を体験したあなたに読んでほしい随筆を6編書き下ろしています。一冊の本の中に、作品の体験とその体験を共有した読者のあなたに向けての随筆があるという

今までにないメディア・デザイン

です。この本にしか存在しない空間を是非、享受していただきたいと思います。

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書籍『新しい分かり方』には、興味深い分かり方をする表現が満ちあふれていますが、その中でも、私がこれは絶対体験してほしいと推薦したい作品と随筆を挙げます。

塩とたまご
金槌と釘の一連
指の下
5円玉とカメラ
いたずら顔の理由
水の影
L I G H T
何の絵本
しおり
紙の裏からこんにちは
ジョン、メディアからの脱出を試みる
父、グスタフ王の命令
ある蜘蛛を讃える詩
秋の象嵌
新しい生物
円弧の中心
へんな箱
世界のはじまり

(随筆)
モダリティの話
系が違う
象嵌(ぞうがん) 医学部2号館

ちょっと多かったですかね、推薦の数としては。
 でも、そんな気にもなるような作品群が並んでいます。その中でも、私が一番好きなのは、……これは秘密にしておきます。では、「新しい分かり方」、是非お楽しみに。

2017年 秋  佐藤雅彦

『新しい分かり方』
著者:佐藤雅彦
発行所:中央公論新社
価格:1,900円+税

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中央公論新社

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